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上顎洞底挙上術（サイナスリフト）について
サイナスリフト（上顎洞底挙上術）とは
サイナスリフトとは、上顎臼歯部（奥歯）にインプラントを埋入する際、骨の厚み（垂直的骨量）が不足している場合に行われる外科的処置の一つです。日本語では「上顎洞底挙上術」と呼ばれ、歯科インプラント治療を成功させるために非常に重要な補助手術とされています。
上顎の奥歯は、歯を失った後に骨吸収が早く進行しやすい部位です。さらに、そのすぐ上には「上顎洞（じょうがくどう）」という空洞（副鼻腔の一部）が存在するため、インプラントを埋めるための骨の厚みが不足しやすい特徴があります。このような場合、サイナスリフトを行い、上顎洞の粘膜を持ち上げ、その下に人工骨や自家骨を移植することで、インプラント埋入に必要な骨量を確保するのです。
サイナスリフトが必要となるケース
サイナスリフトは、以下のような条件で検討されます：
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上顎臼歯部の骨の厚みが不足している場合
通常、インプラントを安定させるためにはある程度の骨の高さが必要です。
しかし骨吸収や上顎洞の拡大によって、骨の高さが 下がってしまい、残っていないこともあります。 -
骨移植だけでは不十分な場合
GBR（骨再生誘導法）などの方法で水平的な骨幅を増やすことはできますが、垂直的な骨量を増やすには限界があります。そのため、上顎臼歯部ではサイナスリフトが選択されます。
サイナスリフトの術式
サイナスリフトには大きく分けて ラテラルアプローチ と クレスタルアプローチ の2つがあります。
1. ラテラルアプローチ（側方アプローチ）
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上顎の側面（頬側）から骨を削り、骨窓を作製して上顎洞粘膜を慎重に剥離・挙上します。
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持ち上げた空間に人工骨や自家骨を填入し、必要に応じて膜で覆います。
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骨量が非常に少ない場合に有効で、最も確実性の高い方法とされています。
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インプラント埋入は、骨造成後の安定を待ち、経過を待ってから行う場合が多いです。
2. クレスタルアプローチ（上方アプローチ）
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歯槽堤（インプラント埋入予定部の歯ぐき上の骨）からアプローチする方法です。
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インプラントを埋入するためのドリルホールから、特殊な器具を用いて上顎洞底を持ち上げ、骨補填材を填入します。
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骨量がある程度残っているケースに適応されます。
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ラテラルアプローチに比べて侵襲が小さく、術後の腫れや痛みも少ないのが特徴です。
使用される骨補填材
サイナスリフトでは、以下のような骨補填材が用いられます：
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自家骨：患者本人の骨を採取して使用する。治癒力が高いが採取部位に負担がかかる。
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同種骨：ヒト由来の骨を加工して使用する。安全性が確立されている。
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異種骨：ウシやブタ由来の骨を加工したもの。代表的なのはBio-Ossなど。
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人工骨：ハイドロキシアパタイトやβ-TCPなどの合成材料。感染リスクが低い。
臨床的には、これらを単独または組み合わせて使用することが多いです。
サイナスリフトの利点と欠点
利点
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骨の高さが不足していても、インプラント治療が可能になる。
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長期的なインプラントの安定性を得やすい。
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上顎臼歯部の欠損に対する治療の幅が広がる。
欠点
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手術の侵襲が比較的大きい。
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上顎洞粘膜を扱う高度な手術であり、専門知識と経験が必要。
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腫れや痛み、出血など術後の不快症状が出ることがある。
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上顎洞粘膜の穿孔（破れ）が合併症として起こる可能性がある。
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治療期間が長くなる場合がある。
サイナスリフト後の注意点
術後の安静・管理が非常に大切です。代表的な注意点は以下の通りです：
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強く鼻をかまない（上顎洞に圧がかかり、骨移植材が動く可能性あり）
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喫煙を控える（治癒を妨げる）
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術後は抗菌薬や消炎鎮痛薬を指示通り服用する
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腫れを抑えるため、当日は安静にし、冷却を行う
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術後しばらくは飛行機やダイビングなど気圧変化のある行為を避ける
まとめ
サイナスリフトは、骨量不足で通常ではインプラント治療が難しいケースにおいて、確実に骨を増やし、治療の可能性を広げるための重要な手術です。ラテラルアプローチとクレスタルアプローチという2つの方法があり、骨の残存量や患者さんの全身状態に応じて選択されます。
ただし、通常のインプラント手術に比べて難易度が高く、合併症のリスクもあるため、経験豊富な歯科医師に依頼することが望ましいです。
監修者情報
こばやし歯科医院
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