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天然歯とインプラントの違い

天然歯とインプラントの違い
歯科治療において、歯を失った際に「天然歯」と「インプラント」はよく比較される存在です。天然歯は本来私たちが持って生まれた歯であり、インプラントは失われた歯の機能を補うために開発された人工の歯根と人工歯冠の組み合わせです。両者は外見上は似ていても、その構造、機能、感覚、メンテナンス方法など、多くの点で違いがあります。
1. 構造の違い
天然歯
天然歯は「歯冠」「歯根」「歯髄」など複数の組織から成り立っています。表面を覆うエナメル質は人体の中で最も硬い組織で、咀嚼に耐えられる強度を持っています。歯根部分は歯槽骨に埋まっており、歯根膜という組織がクッションの役割を果たし、噛む力を吸収・分散しています。この歯根膜があるおかげで、天然歯は噛んだときの微妙な圧力や硬さを感知できるのです。
インプラント
インプラントは大きく分けて3つのパーツで構成されます。
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フィクスチャー(人工歯根):チタンやジルコニアで作られ、顎の骨に埋め込まれます。
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アバットメント:人工歯根と人工歯冠をつなぐ役割を持つ部品。
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人工歯冠:セラミックなどで作られ、見た目や噛み合わせを再現します。
天然歯のような歯根膜は存在せず、骨と直接結合する「オッセオインテグレーション」という現象によって安定します。
2. 感覚と機能の違い
天然歯には歯根膜があるため、硬いものや柔らかいものを噛んだときの圧力を敏感に感じ取ることができます。そのため過度な力を加える前に調整でき、歯や骨を守る仕組みになっています。
一方、インプラントは歯根膜を持たないため、咬合圧の感覚がやや鈍くなります。結果として、天然歯よりも強い力で噛んでしまうことがあり、噛み合わせの管理や定期的なチェックが重要です。
3. 寿命と耐久性
天然歯は適切なブラッシング、フロス、定期的な歯科検診を行えば、一生涯残せる可能性があります。しかし、むし歯や歯周病の影響を受けやすく、口腔ケアを怠ると失われてしまうリスクが高いです。
インプラントはむし歯にはなりませんが、インプラント周囲炎という歯周病に似た病気になる可能性があります。また、骨の状態や噛み合わせによっては寿命が短くなることもあります。一般的には10〜20年以上使えるとされていますが、やはり毎日の清掃と歯科医院での定期的なメンテナンスが不可欠です。
4. 美観の違い
天然歯は自然な透明感や色調を持ち、個々の人に固有の美しさがあります。加齢によって多少の変色は見られますが、それも自然な表情の一部です。
インプラントの人工歯冠はセラミックやジルコニアで作られ、最新の技術では天然歯に近い透明感や色を再現できます。ただし、歯ぐきの退縮が進むとインプラントの金属部分が見えてしまう場合があり、見た目に影響を及ぼす可能性があります。
5. 治療過程の違い
天然歯の治療は、むし歯治療や歯周病治療、詰め物や被せ物によって修復できます。抜歯になる前に多くの選択肢があります。
一方で、インプラント治療は外科手術を伴います。顎骨に人工歯根を埋め込み、骨と結合するまで数か月待つ必要があります。その後、アバットメントと人工歯冠を装着するため、全体の治療期間は数か月から1年以上かかる場合もあります。
6. 費用の違い
天然歯の治療(むし歯や歯周病の治療)は、多くが保険適用となるため比較的安価です。
一方、インプラントは自由診療であり、費用がかかるのが一般的です。ブリッジや入れ歯と比べても高額ですが、天然歯に近い見た目や機能を回復できるため、多くの人が選ぶ治療法となっています。
7. メンテナンスの違い
天然歯は毎日のブラッシング、デンタルフロス、歯科医院でのクリーニングが基本です。
インプラントも同様に清掃が必要ですが、歯根膜がないため炎症が進行しても痛みを感じにくく、気づいたときには重度になっていることがあります。そのため、定期的なメンテナンスをより徹底する必要があります。
まとめ
天然歯は自然に備わった組織であり、感覚や構造、自己修復力など人工物では完全に再現できない優れた特徴を持っています。一方で、インプラントは失った歯を補う最も優れた治療法の一つであり、見た目や機能の回復に非常に有効です。
両者の違いを理解した上で、天然歯をできるだけ守り、どうしても失った場合にインプラントを選択するのが理想的です。歯を守る最大の秘訣は、毎日のセルフケアと歯科医院での定期的なチェックにあります。
監修者情報

こばやし歯科医院
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