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歯科用CTについて

1. 歯科用CTとは
歯科用CT(Dental Cone Beam Computed Tomography, CBCT)は、口腔領域専用に開発された三次元画像撮影装置です。医科用CTと同じくX線を利用しますが、円錐形(コーンビーム)のX線を使い、撮影範囲を口腔や顎顔面に限定しています。そのため、被ばく線量が比較的少なく、歯科診療に適した高解像度の三次元画像が得られます。
従来のパノラマX線やデンタルX線は二次元的な平面画像で、骨や歯の重なりによって見えにくい部分がありました。一方、CTは三次元的に断層画像を得られるため、構造の重なりを取り除き、必要な部位を任意の角度から確認できます。
2. 歯科用CTでわかること
2-1. 顎骨の立体構造
CTでは上顎・下顎の骨形態を詳細に観察できます。例えば:
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骨の厚みや高さ
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骨質(皮質骨と海綿骨の状態)
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骨の欠損や吸収の程度
インプラント手術や骨造成の計画時には、骨量の把握が非常に重要です。二次元レントゲンでは骨の厚みは推測に留まりますが、CTなら実測できます。
2-2. 歯根の形態と位置
個々の歯の根の本数・形態・湾曲の度合いを立体的に確認できます。これにより:
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根管治療前の根の形態把握
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根尖病変の位置と広がり
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隣接歯や骨との距離関係
特に、下顎大臼歯の根の先端と下歯槽神経管との位置関係は、抜歯や根尖切除のリスク評価に役立ちます。
2-3. 病変の位置・広がり
歯周病や根尖性歯周炎、嚢胞、腫瘍などの病変は、三次元的に広がりを確認できます。
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二次元では見えにくい小さな骨吸収
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病変の境界や内部構造
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周囲の解剖構造への波及状況
これにより、病変の正確な診断や、外科処置範囲の予測が可能になります。
2-4. 埋伏歯の位置
親知らず(智歯)や犬歯などの埋伏歯は、位置や方向が個人差が大きく、重要な神経・血管に近接していることがあります。CTでは:
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神経管や上顎洞との距離
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隣接歯への影響
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歯冠・歯根の方向や回転
が明確にわかるため、抜歯時のリスクを評価できます。
2-5. 神経・血管の走行
下顎では下歯槽神経管、オトガイ孔、上顎では上顎洞や切歯管などの重要構造があります。CTではこれらの位置・走行を三次元的に描出できるため、外科処置(インプラント、埋伏歯抜歯、骨造成など)の安全性を高められます。
2-6. 上顎洞の状態
上顎洞の粘膜肥厚、貯留嚢胞、骨壁の欠損など、副鼻腔の状態を把握できます。特に上顎臼歯部のインプラント計画では、上顎洞底までの距離や洞内病変の有無は手術方法に直結します。
2-7. 顎関節の形態
顎関節部を詳細に観察でき、顎関節症の診断に役立ちます。
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関節頭の形態異常や変形
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骨吸収や骨増生の所見
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関節窩との位置関係
ただし、関節円板や軟組織はMRIのほうが適しています。
2-8. 外傷時の評価
外傷による歯や顎骨の破折は、二次元画像では見落としがちな場合があります。CTでは:
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歯根破折の方向と範囲
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顎骨骨折線の位置
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周囲骨との位置関係
が明確になり、治療方針の決定に役立ちます。
3. 歯科用CTとパノラマX線との違い
| 項目 | パノラマX線 | 歯科用CT |
|---|---|---|
| 画像 | 2次元 | 3次元 |
| 観察方向 | 正面のみ | 任意の断面・角度 |
| 骨の厚み | 推測 | 実測可 |
| 病変の広がり | 重なりで不明瞭 | 明確に描出 |
| 被ばく線量 | 低 | やや高い(医科用CTよりは低い) |
4. 歯科用CTの利点
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三次元的で正確な情報
骨量や解剖学的位置関係を正確に評価。 -
重なりの除去
他の構造物に隠れた病変や歯根の形態が明確に。 -
任意断面での観察
必要な部位を好きな角度から確認可能。 -
外科リスクの低減
手術計画の精度向上により、神経損傷などの合併症を回避しやすい。
5. 注意点・限界
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被ばく線量はデンタルやパノラマより高い(ただし医科用CTより低い)
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軟組織の描出は苦手(腫瘍や関節円板の評価はMRIが有用)
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金属アーチファクト(インプラントや金属冠による画像の乱れ)が生じる場合がある
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保険適用範囲が限られる(診断目的による)
6. 主な臨床応用例
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インプラント治療計画(骨量・神経位置の確認)
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難抜歯(特に下顎智歯)のリスク評価
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根管治療困難症例の診断
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顎関節症の骨評価
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顎骨病変(嚢胞・腫瘍など)の診断
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歯の外傷(破折)の確認
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埋伏歯や過剰歯の位置確認
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上顎洞の病変評価
まとめ
歯科用CTは、従来の二次元レントゲンでは得られなかった「立体的で正確な情報」を提供し、診断や治療計画の精度を飛躍的に向上させます。特に、骨量や神経・血管との位置関係、病変の広がりを三次元的に把握できることは、外科処置やインプラント治療において不可欠な情報源です。一方で、被ばくや費用、軟組織描出の限界といった注意点もあるため、必要な症例に絞って適切に活用することが重要です。
監修者情報

こばやし歯科医院
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