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マウスピースの重要性

歯科用マウスピースの重要性

私たちの歯には、食事や会話をするときだけでなく、睡眠中やスポーツ中にも大きな力が加わっています。特に歯ぎしりや食いしばりのある方は、自覚がないまま毎晩のように歯へ負担をかけている可能性があります。また、スポーツ中の転倒や接触によって、健康な歯が一瞬で欠けたり抜けたりすることもあります。

こうした負担や外傷から歯を守るために使用されるのが、歯科用マウスピースです。目的に応じて「ナイトガード」「スプリント」などと呼ばれます。

歯ぎしり・食いしばりは自覚しにくい

歯ぎしりや食いしばりのことを「ブラキシズム」と呼びます。起きているときに行うものと、睡眠中に起こるものがあり、特に睡眠中の歯ぎしりは本人が気づきにくいことが特徴です。

家族から歯ぎしりの音を指摘された経験がなくても、歯科医院で確認すると、歯のすり減りや亀裂などが見つかることがあります。

歯ぎしりや食いしばりが疑われる代表的なサインには、次のようなものがあります。

  • 歯の先端が平らにすり減っている
  • 歯の表面に細い亀裂がある
  • 詰め物や被せ物が頻繁に外れる、欠ける
  • 朝起きたときに顎が疲れている
  • 頬の内側に白い線がある
  • 舌の縁に歯形がついている
  • 冷たいものがしみる
  • 朝に頭痛やこめかみの痛みがある
  • 顎関節や咀嚼筋に痛みを感じる

歯ぎしりの力は想像よりもかなり強く、食いしばりを続けると、歯が少しずつすり減り、内部の象牙質が露出することがあります。その結果、知覚過敏が起こったり、歯の高さが低くなって噛み合わせが変化したりする可能性があります。強い力が繰り返し加われば、健康な歯でも亀裂が入り、最悪の場合には歯根まで割れて、抜歯が必要になることもあります。

ナイトガードが歯を守る仕組み

歯ぎしりや食いしばりから歯を守る目的で、主に睡眠中に装着するマウスピースが「ナイトガード」です。上または下の歯列を覆うように装着し、上下の歯が直接強く接触するのを防ぎます。

ナイトガードを装着すると、歯ぎしりそのものが必ず止まるわけではありません。しかし、歯と歯の間にマウスピースが介在することで、摩擦や衝撃を受け止め、歯のすり減りや破折の危険を軽減できます。つまり、ナイトガードは歯ぎしりの原因を取り除く装置というより、歯に起こる被害を抑える「防具」と考えると分かりやすいでしょう。

歯の表面がすり減ったり、天然歯が割れたりすれば、元の状態へ完全に戻すことはできません。詰め物や被せ物で修復できる場合もありますが、治療範囲が大きくなるほど通院回数や費用が増え、歯そのものの寿命にも影響します。

また、インプラントやセラミックの被せ物を入れている方にとっても、過剰な噛む力への対策は重要です。インプラントには天然歯にある歯根膜がなく、力に対する感覚や衝撃吸収の仕組みが天然歯とは異なります。セラミックも強い材料ですが、限界を超える力が集中すれば欠ける可能性があります。治療した歯や人工物を長く使うためにも、ナイトガードが役立つことがあります。

ただし、顎の痛みにはさまざまな原因があり、マウスピースだけですべての症状が改善するとは限りません。

スポーツ時の外傷から歯を守る

スポーツ用マウスガードは、競技中に受ける衝撃から歯や口の周囲を守るために使用します。ラグビー、ボクシング、空手、アメリカンフットボールなどの接触が多い競技だけでなく、野球、バスケットボール、サッカー、スキー、スノーボード、自転車競技などでも、転倒やボールの衝突による外傷が起こる可能性があります。

顔に強い衝撃を受けると、歯が欠ける、歯根が折れる、歯が抜ける、唇や頬の内側を切るといったけがにつながります。一度失われた永久歯は、自然に生え直すことがありません。特に成長期の子どもや若い選手が前歯を失った場合、その後、長期間にわたって歯科治療が必要になることもあります。

スポーツマウスガードは、衝撃を分散・吸収し、上下の歯が直接ぶつかることや、歯によって唇や舌を傷つける危険を減らします。競技によって着用が義務化されていなくても、歯の外傷リスクがある場合は使用を検討する価値があります。

なお、スポーツマウスガードに脳振盪を完全に防ぐ効果があるとまでは言い切れません。マウスガードを装着していても、頭部への強い衝撃を受けた場合は、競技を中止して適切な診察を受ける必要があります。

市販品と歯科医院で作るマウスピースの違い

市販のマウスピースには、比較的安価で手軽に入手できる利点があります。しかし、一人ひとりの歯並びや噛み合わせに合わせて作られていないため、外れやすい、話しにくい、呼吸しにくい、歯ぐきを圧迫するといった問題が起こることがあります。

一方、歯科医院で作製するマウスピースは、歯型や口腔内スキャンのデータをもとに作られます。歯列に合わせて調整できるため、適合性が高く、必要な厚みや噛み合わせを設定できます。特にナイトガードでは、単に歯を覆えばよいわけではありません。噛み合わせが不適切な状態で長期間使用すると、特定の歯に負担が集中したり、歯や歯ぐきに違和感が出たりする可能性があります。

装置の硬さや形も目的によって異なります。自己判断で購入するのではなく、現在の歯の状態、顎関節、噛み合わせ、歯ぎしりの程度、使用する競技などを歯科医師に確認してもらうことが大切です。

正しく使用し、定期的に点検する

マウスピースは作って終わりではありません。使用しているうちにすり減ったり、変形したり、穴が開いたりするため、定期的な点検が必要です。歯科治療によって歯の形が変わった場合や、子どもの成長・歯の生え替わりがあった場合にも、作り直しが必要になることがあります。

使用後は水やぬるま湯で洗い、専用ブラシなどで汚れを落とします。熱湯を使用すると変形する恐れがあるため避けてください。洗浄後は十分に乾燥させ、通気性のあるケースに入れて保管します。歯磨き粉には研磨剤が含まれていることがあり、細かな傷をつける可能性があるため、使用する洗浄剤については歯科医院の指示に従いましょう。

装着後に強い痛みがある、歯が動いた感じがする、歯ぐきから出血する、外れやすくなった、噛み合わせが変わったと感じる場合は、使用を続ける前に歯科医院へ相談してください。

大切な歯を失う前に予防する

歯科用マウスピースの最大の役割は、「問題が起きてから治す」のではなく、「大切な歯が傷つく前に守る」ことです。

歯ぎしりや食いしばりは、自分の意思だけで完全に止めることが難しい場合があります。スポーツ中の衝突や転倒も、すべてを予測することはできません。しかし、適切なマウスピースを使用すれば、歯に加わる負担や外傷の程度を軽減できる可能性があります。

天然歯は、どれほど精密な詰め物や被せ物、インプラントであっても完全に置き換えることのできない大切な組織です。現在痛みがないから大丈夫と考えるのではなく、歯のすり減りや亀裂などの小さな変化を早期に見つけ、必要に応じて守る対策を始めることが重要です。

歯ぎしりを指摘された方、朝に顎の疲れを感じる方、詰め物や被せ物がよく壊れる方、接触や転倒の可能性があるスポーツをしている方は、一度歯科医院で相談してみましょう。自分の口と目的に合ったマウスピースを正しく使用することが、歯を長く健康に保ち、生涯にわたって食事や会話を楽しむための大切な予防につながります。

歯ぎしりを自覚された方は、まずはお近くの歯医者さんを受診してみてください。

監修者情報

こばやし歯科医院
〒185-0012
東京都国分寺市本町2-9-21
Tel:042-400-2004

院長 小林 達也

経歴 日本歯科大学新潟生命歯学部 卒業

日本歯科大学新潟生命歯学部 臨床研修

医療法人社団幸誠会たぼ歯科医院 勤務

国家公務員共済組合連合会立川病院 歯科口腔外科 非常勤勤務

こばやし歯科医院 開院
資格 日本歯周病学会 専門医
臨床研修指導医