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歯がしみる…これって虫歯?

歯がしみると、「もしかして虫歯かな?」と不安になりますよね。

結論からお伝えすると、歯がしみる原因=すべて虫歯というわけではありません。 むしろ、大人の歯がしみる原因としては、虫歯と同じくらい(あるいはそれ以上に)多い別の病気やトラブルが隠れていることがよくあります。

ここでは、歯がしみるメカニズムから、虫歯とそれ以外の原因の見分け方、自宅での応急処置、そして歯医者さんで行われる治療法まで、約3,000文字で徹底的に詳しく解説します。あなたの症状がどれに当てはまるか、ぜひチェックしてみてください。

1. なぜ歯がしみるのか?「知覚過敏」のメカニズム

原因を探る前に、まず「歯がしみる」という現象がなぜ起こるのか、その仕組みを簡単にご説明します。

構造的に、歯は3つの層でできています。

  1. エナメル質(一番外側): 体の中で最も硬い組織で、神経がありません。削っても痛みは感じません。

  2. 象牙質(真ん中の層): エナメル質の内側にある少し柔らかい組織です。ここには「象牙細管(ぞうげさいかん)」という、神経へとつながる無数のミクロの管(ストローのようなもの)が通っています。

  3. 歯髄(一番内側): いわゆる「歯の神経」です。血管と神経が通っており、ここで痛みやしみを感じます。

何らかの理由で一番外側の硬い「エナメル質」が削れたり、歯茎が下がって歯の根元が露出したりすると、真ん中の層である「象牙質」が剥き出しになってしまいます。 この剥き出しになった象牙質に、冷たい水、熱いお湯、甘いもの、あるいはブラシの毛先などが触れると、象牙細管(ミクロの管)を通じて刺激がダイレクトに奥の神経(歯髄)に伝わり、「痛い!」「しみる!」と感じるのです。

この現象の総称を「知覚過敏(ちかくかびん)」と呼びます。虫歯も、それ以外の原因も、基本的にはこの象牙質が露出して神経に刺激が伝わることで「しみる」という症状を引き起こします。

2. 【原因①】やっぱり「虫歯」が原因でしみる場合

歯がしみる原因が「虫歯」である場合、虫歯菌の出す酸によってエナメル質が溶かされ、象牙質まで穴が広がっているサインです。

虫歯でしみるときの特徴

  • 冷たいものだけでなく、熱いものや甘いものでもしみる

  • 刺激を取り去っても、しばらく痛みがジンジンと残る

  • しみる場所(特定の1本の歯)がはっきり特定できる

  • 見た目に黒い穴が開いている、または歯の噛み合わせ面や隙間が茶色くなっている

  • 何もしなくてもズキズキ痛むことがある(重症化しているサイン)

虫歯の進行度としみの関係

虫歯は進行度によって C0​ 〜 C4​ という段階に分けられますが、しみる症状が出るのは主に C2​(象牙質虫歯)の段階からです。

  • C1​(エナメル質虫歯): 歯の表面だけが溶けている状態。神経がない場所なので、まだしみません。

  • C2​(象牙質虫歯): 虫歯が象牙質まで達した状態。ここで一気に「冷たいものがしみる」「甘いものが響く」という症状が出始めます。

  • C3​(歯髄炎): 虫歯が神経まで達した状態。こうなると「しみる」を通り越して「激激に痛む」「夜も眠れない」「熱いものが激痛」という状態になります。

  • C4​(残根): 歯の頭が崩壊し、神経が死んでしまった状態。一時的に痛みは消えますが、根の先に膿が溜まると再び激痛が走ります。

もし、「熱いものもしみる」「痛みが数分間続く」という場合は、虫歯が神経の近くまで進んでいる可能性が高い(C2​ の後半〜C3​)ため、早急な治療が必要です。

3. 【原因②】虫歯じゃないのにしみる「5つの原因」

「歯医者さんで見てもらったけれど、虫歯はなかった」というケースは非常に多いです。虫歯以外で歯がしみる主な原因を5つ挙げます。

① 歯肉退縮(歯茎が下がること)

加齢や歯周病、あるいは強すぎるブラッシングによって歯茎が下がると、本来は歯茎の中に隠れていた「歯の根元(セメント質・象牙質)」が露出します。 歯の根元には、頭の部分にあるような硬いエナメル質がありません。そのため、少し歯茎が下がっただけでダイレクトに象牙質が露出し、非常にしみやすくなります。大人の知覚過敏の多くがこれが原因です。

② 歯ぎしり・食いしばり(楔状欠損:くさびじょうけっそん)

寝ている間の歯ぎしりや、日中の無意識の食いしばりによって、歯には毎日ものすごい過重(自分の体重以上の力)がかかっています。 この応力が歯の根元に集中すると、根元のエナメル質がパキパキと細かく剥がれ落ち、まるで木を斧で切り倒すときのような「くさび型の段差(凹み)」ができてしまいます。これを楔状欠損と呼び、象牙質が剥き出しになるため猛烈にしみることがあります。

③ 酸蝕歯(さんしょくし)

現代人に増えているのが、食べ物や飲み物に含まれる「酸」によって歯が全体的に溶けてしまう病気です。

  • 炭酸飲料、スポーツドリンク

  • ワイン、ビール

  • レモン、グレープフルーツなどの柑橘類

  • お酢、ドレッシング

これらを頻繁に口にしたり、口の中に長く含んでいたりする習慣があると、虫歯菌がいなくても歯の表面のエナメル質が徐々に溶けて薄くなり、中の象牙質が透けて見えたり、全体的にしみるようになったりします。

④ 歯のひび割れ(マイクロクラック)

過去に大きな詰め物をした歯や、歯ぎしりが強い人の歯には、目に見えないほどの細かいひび(マイクロクラック)が入ることがあります。 髪の毛ほどの薄いひびであっても、物を噛んだ瞬間にひびが開き、そこから水分や刺激が神経に直接伝わるため、「噛むとしみる」「急にピキッとしみる」という症状が起こります。

⑤ 歯医者さんの治療のあと

「虫歯の治療をして、新しく銀歯や白い詰め物を入れたばかりなのに、前よりしみるようになった!」というトラブルはよくあります。これは決して治療ミスではありません。

  • 虫歯を削った刺激で、中の神経が一時的に過敏になっている

  • 金属(銀歯など)は熱を伝えやすいため、冷たい・熱い刺激が神経に響きやすい

通常は、人間の体の防御反応(=神経が内側に縮んで、新しく象牙質を分厚く作る反応)によって、数週間〜数ヶ月で自然としみなくなっていきます。

4. 虫歯 vs 知覚過敏(虫歯以外)の見分け方

自分の症状がどちらなのか、目安となるセルフチェック表を作成しました。

症状・特徴 虫歯の可能性が高い 知覚過敏(虫歯以外)の可能性が高い
しみる時間 刺激を遠ざけても、数十秒〜数分間ジワジワ痛みが続く 刺激を遠ざけると、数秒でスッと治まる
しみる対象 冷たいもの、熱いもの、甘いもの 主に冷たいもの、風、ブラッシング時の擦れ
痛みの変化 時間の経過とともにだんだん悪化する 日によって波がある(疲れているときにしみる等)
場所の特定 「この歯が痛い」とピンポイントで分かる 「このあたり全体がなんとなくしみる」と曖昧
見た目の変化 歯に黒い穴がある、茶色い線がある 歯茎が下がっている、根元が凹んでいる

⚠️ 注意: これはあくまで目安です。「知覚過敏だと思っていたら、歯の隙間に大きな隠れ虫歯があった」というケースも多々あります。自己判断で放置せず、必ず歯科医師の診断を受けてください。

5. 【応急処置】今すぐ自宅でできる対策とNG行動

「夜間で歯医者さんが開いていない」「週末まで行けない」というときのために、自宅でできる対策と、絶対にやってはいけないNG行動をまとめました。

自宅でできる応急処置

  1. 知覚過敏用の歯磨き粉を使う: 「硝酸カリウム(カリウムイオン)」という成分が含まれた歯磨き粉(シュミテクトなど)を使いましょう。この成分が神経の周りにイオンのバリアを形成し、痛みの伝達をブロックしてくれます。2週間ほど使い続けると効果を実感しやすくなります。

  2. ぬるま湯で口をゆすぐ: うがいをするときは、キンキンに冷えた水道水ではなく、体温に近いぬるま湯を使いましょう。

  3. 柔らかい歯ブラシに変え、優しく磨く: ゴシゴシと力任せに磨くと、露出した象牙質がさらに削れて症状が悪化します。ペンを持つように軽い力で磨いてください。

  4. ロキソニンやバファリンなどの痛み止めを飲む: どうしても痛みが自制できない場合は、市販の鎮痛剤を服用して一時的にしのいでください。

避けるべきNG行動(やってはいけないこと)

  • 冷たいもの・熱いものを交互に口にしない: 神経に大きな負担をかけ、最悪の場合、神経が死んでしまいます。

  • しみている歯を指や爪楊枝で触らない: 細菌感染や、物理的な刺激で炎症が悪化します。

  • お酒を飲んだり、お風呂に長く浸かったりしない: 血流が良くなると、歯の神経が圧迫されて痛みが激しくなることがあります。

6. 歯医者さんで行われるプロの治療法

歯医者さんに行くと、原因に合わせて以下のような適切な治療が受けられます。

虫歯が原因の場合

  • 軽度(C2​): 虫歯の部分をきれいに削り取り、プラスチック(コンポジットレジン)を詰めたり、型取りをしてインレー(部分的な詰め物)を装着します。

  • 重度(C3​): 神経まで炎症が及んでいる場合は、麻酔をして神経を取り除く治療(根管治療)を行い、最終的に被せ物(クラウン)をします。

知覚過敏(虫歯以外)が原因の場合

  • 薬の塗布(コーティング): 象牙質のミクロの穴(象牙細管)を塞ぐための特殊な薬剤(フッ素や樹脂性のコーティング剤)を歯の表面に塗ります。数回塗ることでしみるのを抑えます。

  • 歯科用プラスチックでの穴埋め: 歯の根元がくさび型に深く削れてしまっている場合は、その凹みに歯と同じ色のプラスチックを詰めて物理的に遮断します。

  • マウスピースの製作: 歯ぎしりや食いしばりが原因の場合、寝るときに装着する「ナイトガード(マウスピース)」を作ります。歯にかかる負担を分散させ、歯が削れるのを防ぎます。

  • 歯周病治療: 歯茎が下がっている原因が歯周病であれば、歯石を除去し、歯茎を引き締めてこれ以上下がらないようにします。

7. まとめ:放置するのが一番のリスクです

「歯がしみる」というのは、体からの「これ以上歯の組織を減らさないで!」「神経がピンチだよ!」という重要なアラート(警告信号)です。

単なる知覚過敏であれば、歯磨き粉の変更やコーティング治療で劇的に改善することが多いですし、もし虫歯だったとしても、初期〜中期の段階であれば治療回数も少なく、費用も抑えられます。

一番怖いのは、「しみるのを我慢して放置した結果、ある日突然、神経が死んで痛みが消え、さらに放置したことで歯の根っこまでボロボロになって抜歯せざるを得なくなる」というシナリオです。

まずは一度、歯科医院を受診して「なぜしみているのか」の正確な原因を見つけてもらいましょう。早期発見・早期対策が、あなたの大切な歯を一生守るための最も確実な近道です。

監修者情報

こばやし歯科医院
〒185-0012
東京都国分寺市本町2-9-21
Tel:042-400-2004

院長 小林 達也

経歴 日本歯科大学新潟生命歯学部 卒業

日本歯科大学新潟生命歯学部 臨床研修

医療法人社団幸誠会たぼ歯科医院 勤務

国家公務員共済組合連合会立川病院 歯科口腔外科 非常勤勤務

こばやし歯科医院 開院
資格 日本歯周病学会 専門医
臨床研修指導医